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平成作文~未来へ

作文応募期間:平成30年1月26日~3月20日

井の中の蛙、大海へ

平成元年6月の大阪への転勤辞令は、私にとって思いも寄らないことだった。50数年間、特に深い考えも無いまま、のうのうと会社と自宅の間を往復するマネー・キャリアに何の疑念も抱かず、これこそまっとうな人生と納得していたので、まさに寝耳に水、突然小舟で荒波に放り出されたような衝撃を受けた。当時の家族構成は、妻と子ども3人に加え、80半ばの母親の6人で、世帯主が留守でも心配することは無かった。転勤にあたって業務への不安は無かったが、食事準備の経験が皆無なのには困った。手配されたワンルームの敷地内にコンビニが同居していたのが幸いして、滞在期間中は自炊せずに済んだ。なじみの無い関西弁は、最初は耳触り良く柔らかく聞こえたが、時間と共に耳障りな音と化し、時にはきつく強く響いたりした。閉め切った真夏の部屋は昏倒しそうで、汗が吹き出すばかり。厳冬期は深々と冷えた部屋で冷蔵庫に飛び込んだように身震いし、アルコールの力を借用して過ごした。人間には話相手が不可欠と悟り、猫の子でもいれば多少違うと感じた。この年の4月、消費税制度で3%の税が導入されたので、小銭入れに1円や5円玉がやたら増え、財布は常に膨らんだ状態である。その年末には、長男の結婚話が持ち上がった。自宅と赴任地間は約170kmなので、週末などの折々の行き来には車を使用するようにしていた。家族の温もりを再び味わったのは、平成3年の7月である。

愛知県名古屋市(南区) 森部三登野さん 83歳 家族・親族会社・仕事新生活・引越

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