年表

時代

年表

閉じる

平成作文~未来へ

作文応募期間:平成30年3月15日~4月30日

町が街になった

平成4年1月、あさっては初釜だ。今日はサケ寿し用にハランを、松葉銀杏に使う松葉を庭で採って、洗っておかなくては。白椿に見立てた大根の甘酢付けも仕込んでで、魚も漬け込んで、と段取りを考えていた。その時、電話のベルが鳴った。妹からだった。父が亡くなったと知らせてきた。すぐに師の所へ行き、初釜のお手伝いと料理ができないことを告げた。父の葬儀が済み、2月に稽古が始まった。師は初釜のことは何もおっしゃらなかった。私も聞くことはなかった。年末に、「もうお寿しは作らなくて良いよ。配達してくれるお店ができ来たから」とのこと。今風の仕出屋ができたのだ。今までの仕出屋は、重い陶器の器を運んでいた。それが軽いプラスチックの器で使い捨てに。だから引き取りに来る手間もいらない。私の初釜のサケ寿し作りは15年ほどで終わった。昭和の終わりに、地主の会社が立ち行かなくなり失踪、それにともないわが店も立ち退きすることに。借金をしてもう一度店を持つか、新しい人生を歩むか考えた末に、違う生活を楽しもうと、別の場所で働くことにした。私の職場は魚屋。その店では魚を包むのに薄板を使っていた。それが加工紙になり、パール皿にラップ、ビニール袋になった。私は下駄が好きだ。二枚歯が少なくなり、新しい履物が増えた。私の好きな物がどんどん消えて行く気がした。ゴミの量と種類が変わった。町が、街になった。

愛知県春日井市 伊東小夜子さん 70歳 家族・親族会社・仕事就職・転職別れ

  • facebook
  • twitter
  • line

平成4年の国内・海外の主要ニュースを見る