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平成作文~未来へ

作文応募期間:平成30年4月15日~5月31日

息子からのプレゼント

5月のゴールデンウイークが終わって数日後に、息子から荷物が送られてきた。それは新しいビデオデッキだった。連休で帰省した時、ビデオを見ながら「このデッキ調子が悪いよ、新しく替えたら」と言っていた息子。“あいつ洒落たことを”と思いながら電話をかけ、「臨時の出費で大丈夫か」と聞くと、「大丈夫、心配無用。もうすぐボーナスも出るし、俺から初めてのプレゼントだよ」と笑っていた。1年前、大学の卒業を前にして「東京へ行きたい」と聞いた時、30数年前の自分を思い出した。東京に憧れていたが、家庭の事情を考え、親に話すことができなかった。息子の気持ちはよく分かった。「よし、いつかは帰って親の面倒を見ること」と約束した。息子は内定していた地元の会社を辞退して、東京の会社に就職した。一緒に荷物を運んだ。帰る時、初めて親元を離れる生活に寂しそうに手を振っていたのに、少しずつ成長したんだと胸が熱くなった。東京の水が合ったのか、帰省するたびに楽しそうに話す姿を見て、東京へ行かせて良かったと思った。東京の生活はその後も順調に過ぎ、いつの間にか20年が経った。「そろそろ帰ってこいよ」「もう少し待ってよ」の会話を交わす時期になったのに、突然、本当に突然、息子は名古屋に帰ることなく、人生を終えてしまった。私にとっては信じられない、大きなショックであった。あれから間もなく4年になる。息子の笑顔も、声も、もう聞くことはできないけれども、あの平成5年の初めてのプレゼントは忘れることはない。

愛知県名古屋市(昭和区) 市川賢さん 80歳 喜び家族・親族別れ悲しみ

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