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平成作文~未来へ

作文応募期間:平成30年6月15日~7月30日

あの日

あの日、名古屋駅前のホテルで挙式を控えていた僕たちは、ナナちゃん人形の前を袴姿と文金高島田の姿で誇り高く歩き、式会場へ向かっていた。道行く人の視線がとても心地良かった。大勢の人たちが幸せの絶頂期にある若いカップルの姿を振り返っていた。1997年11月22日だった。結婚式としてその日を選んだのは、いい夫婦の日(11月22日)なら、結婚後何年経っても、思い出すのが簡単だと思ったからに過ぎなかった。幸せ絶頂期にあった僕には、その日の朝見た新聞の記事は心に少しだけ引っかかっていたが、大した話だとは思わなかった。まさか、その記事がその後の僕を20年近く苦しめることになるとは。その記事とは、山一證券の経営破綻の記事だった。1997年は北海道拓殖銀行、三洋証券の破綻が続き、僕がいた金融業界にとって激震の時代だった。僕はそこから逃げたかった。先行き不安な世の中、会社の倒産、終身雇用の終わり、そういった嫌な話から逃げて、幸せな結婚により、無理やり自分の人生を楽しい方向へ転換しようとしていた。結婚式は円滑に終わった。安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」がBGMに流れるなか、友人たちに胴上げまでしてもらった。翌週の月曜日の朝、山一證券は自主廃業を発表した。その後、僕の会社人生は、胴上げされたあのホテルの天井すれすれの高さから、真っさかさまに奈落の底に落ちることになった。山一證券の影響を受けて、僕のいた銀行の株価は急落し、遂にはその1年後、経営破綻した。1997年は僕にとって、幸せの絶頂期と、不穏な知らせを受けた、とても複雑な年になってしまった。特に11月22日は結婚記念日であり、山一證券の破綻を思い出す記念日でもある。絶対に忘れられない年なのである。あれから21年。僕の結婚式で流れた曲を歌う安室奈美恵さんも、ついに今年引退するという。あの複雑な年に心の区切りをつけたいと心の底から思う。

愛知県春日井市 小田直樹さん 47歳 喜び恋人流行・世相出会い悲しみ

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