年表

時代

年表

閉じる

平成作文~未来へ

作文応募期間:平成30年6月15日~7月30日

Quality of life

平成10年は、人の生と死、生命についていろいろと考える年だった。2年前にガンで「あと半年」と診断された舅が、強運と治療のおかげで2年経っても生き延びていた。本人が病名を知らされていないせいもあるのか、普通に近い生活を送っていたが、元気な分、治療を嫌がるようになり、どうしたものかと思案に暮れるようになった矢先、体調が急変し、緊急入院となった。主治医から「今度は本当にあと数か月です」と言われた。確かに今までと明らかに違う舅の容態に、私も夫も覚悟を決めた。残された日々を本人が安楽に過ごせるように、そして家族が笑顔で接することができるように、いろいろ考え話し合う日々だった。舅のことで慌ただしくしていたある秋の日、私の祖母が亡くなった。丈夫で強くて働き者の祖母だったが、晩年はいろいろなことが分からなくなり、寝たきりだった。いつもかわいがってくれた祖母が、ある日「どこのどなたか存じませんが、おいでくださってありがとうございます」と私の顔を見て正座をし、三つ指ついておじぎをしたときのショックは今も忘れない。亡くなる前に苦痛や寂しさを感じられなくなったのが、救いだったと思う。年末には、娘の保育園で発表会があった。舅が「命が縮まってもいいから見たい」と言うので医師に相談すると、「外出したら生きて帰れないかもしれない。命の保障はできない」と言われ、命と本人の思いとのどちらを選ぶかとうい究極の選択を迫られた。悩んだ末、皆で万全の態勢を整え、舅を発表会へ連れ出した。孫娘のかわいい歌や踊りが見られ大満足の舅は、外出前より元気になったように見えた。エネルギーをもらったのかのように、それから3ヵ月がんばった。生きがいや楽しみは生きる力を強くする。「生活の質」「生命の質」について学び、考え続けた1年だった。

静岡県浜松市 鈴木由起子さん 51歳 楽しみ家族・親族心身の変化別れ悲しみ

  • facebook
  • twitter
  • line

平成10年の国内・海外の主要ニュースを見る