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平成作文~未来へ

作文応募期間:平成30年7月15日~8月30日

だんごが蘇らせる夏

「串に刺さってだんご、3つ並んでだんご」。9歳なりに気を遣った声量で、しかしその日が最後のお見舞いになるとは思いもしない朗らかな歌声が夜の病室に響いていた。 プールに通い詰めて逆パンダに日焼けした私を、祖母は酸素マスクに透かせた笑顔で迎えてくれた。すぐに治って帰ってくると信じて疑わなかった私にとって、お見舞いはちょっとしたお出かけだったし、酸素マスクが意味する祖母の体調など思いやることもなかった。そんな私に祖母から手渡されたのが、当時大流行していた「だんご3兄弟」のCDだ。入院しているのに用意してくれたのと、驚き半分うれしさ半分で受け取り、口ずさむ。誕生日が近づく7月のことだった。暑さが増すにつれて日焼けに磨きがかかる私の一方で、祖母は会話すらままならぬほど弱っていった。病院の行き帰りの車内はだんご3兄弟。相変わらず、お見舞いはちょっとしたお出かけだった。8月。自分のパジャマを持って行くようにと母に言われた。病院にお泊りとはどういうことだろう。このとき初めて、少しだけ、嫌な予感がした。「串に刺さってだんご、3つ並んでだんご」。祖母の眠るベッドの横に敷かれた小さな布団の中で、私は口ずさんでいた。祖母が寝ているから、と気を遣った声量で。すぐに治って帰ってくるから、と信じて疑わないよう朗らかに。物心ついて初めて経験する、家族の死だった。曲を聞けば、当時のことが蘇る。私にとって音楽は思い出だ。1999年の夏にあふれていたのは、大好きな祖母がプレゼントしてくれただんごの曲だ。

愛知県小牧市 水野雄太さん 28歳 家族・親族別れ

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