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平成作文~未来へ

作文応募期間:平成30年7月15日~8月30日

天国と地獄を味わった夏

「5年後の私の家族をのぞいてみたい。いや、やっぱりよそう、もしかしてそこに私が居なかったら、知らないままの方がいい」。平成12年の9月半ば、がん手術を終え退院した娘の声が今も私の耳にはっきり残っています。当時娘は31歳、結婚5年目でした。子どもが欲しいと思っていた矢先にネフローゼ病を発病し、4年間の治療後やっと子どもに恵まれたのです。待望の初産は平成12年8月9日。緊急の帝王切開の末に無事男子誕生、幸せな日はあっという間に過ぎて、退院の日です。8月17日退院の日はがん発見の特別な日になってしまったのです。本人が少し気にしていた腸の内視鏡検査をしてもらった結果、大腸がんが見つかって娘は慌ただしく外科病棟に移されました。私は突然真っ暗な地獄へ落とされたように呆然とするばかりでした。それからがんの開腹手術ができるまでの3週間、私の頭の中は、もしかして娘がいなくなってしまったら、生まれたばかりの子を育てることになったらなど、考えれば考えるほど狂いそうになるばかり。うろたえる自分を平静に装おうと必死でした。テレビから連日放映されるシドニーオリンピックも上の空、病院と娘宅の往復に精いっぱいの夏でした。無事手術を終え退院の日に主治医より、「5年生存率60%です」の説明を聞いた娘が帰宅後つぶやいたひと言が冒頭の言葉でした。施設へ一時預ってもらっていた子どもも手元に戻り、自宅で子どもの世話をしながら治療をして行きたいという娘のために、1週間の前半を新居町の自宅で、後半は東京で手伝うことにしました。車窓に映る富士山が時には涙で霞んだり、雄大なその姿に励まされたりの往復でした。定期検診を受ける際、一喜一憂したこの18年間でしたが、やっと「定期検診今回で終わりになったよ」と電話の娘の声がとびっきり弾んで聞こえました。がん発見と同時に生まれた男児も18歳、今大学受験に向け頑張っています。

静岡県湖西市 鈴木弘子さん 77歳 喜び家族・親族出産・育児心身の変化悲しみ

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