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平成作文~未来へ

作文応募期間:平成30年7月15日~8月30日

末の妹へ

6人兄弟の一番下に生まれたお前が、兄弟の中で一番最初に死んでしまうなんて。驚きと絶望と運命の残酷さをしみじみと味わったものでした。乳がんなら、長女も同じ頃に罹患したけれど、手術して再発しないでいるのに。なぜ、お前だけがさんざんに苦しみ、死ななければならなかったのか。がんが再発し、がん細胞が脊髄まで転移し、「痛い、痛い」と苦しんでいました。痛みどめも効かなかったようです。一時は、手術ミスをしたのではないかと、医師と病院を恨んだものでした。末に生まれたお前だから、父や母ばかりでなく、兄弟みんなからかわいがられていたね。わがまま放題だってできたのに、どういうわけか、生来の優しさからか、幼い頃から周りの人たちの誰にも気を遣う子で、気疲れしないかと心配したものでした。見舞いに行くと、こちらのお茶から座るイスのことまで心配してくれて、耐えられないほどの痛みにも関わらず人に気を遣っていたのには感心しましたよ。葬儀の日には、春の長雨がしとしとと降りしきり、参列者の誰もが「涙雨だ」とささやき合ったものでした。納棺の折、お前の主人と一人息子が、お前の成人式に私たち兄弟全員で用意した振袖を棺に納めました。あの振袖は、父と母と5人の兄弟が、この子だけには世間並の格好で成人式に出席させたいと願い、資金を出し合い、準備したものでした。自分たちの成人式は普段着で出席し、悔しい思いをしたから、お前にだけはそんな思いをさせたくないと協力し合って買った振袖でした。本当に良い思い出になっています。死んだら浄土に生まれ変わることだけを望んでいた妹よ。浄土がどんなところかは分かりませんが、どうか、6人の兄弟が力を合わせて一生懸命に暮らしていた、あの頃の年齢で生まれ変わってほしい。残された兄弟みんなで、そう話し合っていましたよ。みんな、あの頃の若さで生まれ変わろうと約束していますから、お前もそうしてほしいと思うよ。

愛知県尾張旭市 浅野憲治さん 70歳 家族・親族心身の変化別れ悲しみ怒り

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