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平成作文~未来へ

作文応募期間:平成30年9月15日~10月31日

老いの友

小中学校を一緒に通った同級生が、定年になって戻ってきた。以来、私の都合など構わず、山菜採りや海釣り、喫茶店などに無理矢理誘いにくる。私には私の趣味や暮らしがあると言っても、やってくる。どんな頼み事も、ドリフターズファンの彼は、「チョットだけよ」などと、腰をくねらせて言うだけで、少しも気遣うことはない。この年、囲碁を楽しもうと、老人クラブの勧誘に来た。老人クラブには今までも、何度か勧められたが断ってきた。長い年月を生きて、今は老いと病に苦しみ、さらにその先に悩む、人生の終末集団という、暗いイメージを持っていたからだ。しかし私は、老人クラブを誤解していた。絵を描く人、童謡を皆で歌う人、ダンスをする人、ゲートボールやグラウンドゴルフなど、グループで楽しむのを統括する総称だった。誰もが自分自身のための時間を、ようやく見つけたようにして楽しんでいた。私もまた、誘ってくれた友に今回は感謝をし、囲碁に夢中になった。ドリフターズのリーダーいかりや長介さんが、亡くなったのと同じ頃だった。碁敵になった陽気な友が、自宅の浴槽で転び、大腿を骨折した。「このまま死ぬのか、嫌だなあ」と、見舞いの私に、暗い顔を見せているのが、いつ時もの彼らしくない。「何で嫌なのだ。碁ができなくなるからか」と、また冗談で言い返すだろうと、口元をほころばせながら聞いてみた。「若い頃は恋におぼれ、歳をとって風呂におぼれた。もうすぐ、火葬の火にのまれる。熱いから嫌だな」。「前後が、一致していないぞ。8時だよ、全員集合!もっとまじめに答えろ、分ったか」と、握った手を叩いてやった。

岐阜県北方町 大野博司さん 78歳 楽しみ友人・仲間趣味・レジャー心身の変化

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