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平成作文~未来へ

作文応募期間:平成30年10月15日~11月30日

赤いセーター

平成17年後半から18年にかけては、平凡で、穏やかで、それを幸せとも思わない、今思うともったいないような生活が、一変した頃である。愛知万博を見に行こうと、チケットを購入した矢先、夫が心筋梗塞で倒れ、4回も入退院をしたあげく、旅立ってしまった。夫69歳、私65歳だった。葬儀屋のペースに流されるように葬儀が終わっても、泣いている暇も無く、さまざまな手続きに追われ、やらねばならないことがいっぱいあった。何度も市役所に、銀行にと、当時世話をしていた孫娘を連れて、あちこち駆けずり回った。一家の主が亡くなるって、これほど大変なことなのか。何をしても、どこへ行っても、自分ほど不幸な者はないと、暗闇の中にいた私を元気にしてくれたのは、思い切って着た赤いセーターだった。そして、幼稚園児を残して亡くなった近所の人を思い、自分だけが不孝な主人公ではないと思ったとき、目の前に一筋の光を見たような気がした。立ち直るのは割と早かった。幼い孫の存在も大きかった。3歳と5歳の孫娘たちの世話は、大変ながらもやり甲斐と生き甲斐になり、元気と勇気をもらった。大きく変わったのは、経済面だった。夫の年金なら、質素にやれば、老後のための貯蓄もわずかながらできたのに、半分以下になった遺族年金では、全く余裕がなくなった。あれから13年。わずかな貯金をとりくずしながら、ひたすら健康で過ごせるように努力する毎日だ。そして、限られた時間と、小さな財布の中身と相談しながら、自分なりの楽しみを見つけて、夫の分まで生きていこうと思っている。

静岡県掛川市 森下宜子さん 78歳 家族・親族心身の変化別れ悲しみ

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