年表

時代

年表

閉じる

平成作文~未来へ

作文応募期間:平成30年11月15日~12月31日

三十三間堂の仏

殺すより殺される方がよい。欧米の人達には、到底理解のできない言い様でも、私たちはそれほどの違和感もなく聞く。《一切衆生悉有(しつう)仏性》仏教教義の意味とは、少し違ったとらえ方であっても、誰もが仏と同じ慈悲の心を持つと、これを意識しないままに善行を行おうとする。加えて、草木一本にも霊魂が宿ると、アニミズムの考えも持つ。我々は、優しい民族だと思っていた。それが最近は、自分以外を思わぬ人たちの、無軌道ぶりが目に余るようになった。谷沿いの道路脇や耕作をする田畑に、ごみを捨てていく人がいる。一片の罪悪感もないのだろうか。この年ついに、畑の角に設置した半畳分くらいの、小さな農作物の無人販売所を壊してしまった。家族では食べきれない分を一山ごとに分け、百円で並べていた。夕方になってこれの回収に出かけると、山の数と金額が合わないようになった。それでも、新鮮で安いと言って、喜んで買ってくれる人がいる。これを励みにして、続けてきた。料金箱に1円玉が混じるのは、百円硬貨の代わりに入れられたのだろう。全く料金が入っていない日も続くようになった。耕耘をし、種を蒔き、草を引き、施肥をする。暑い日には敷き藁、寒い日にはビニールトンネルをして、まるでわが子を育てるのと同じような思いで育ててきた。怒りがこみ上げてきて眠れないほど、感情が高ぶってきたこともある。「慈悲と情けの仏のようと、噂のされる私にも限度がある。無人販売所なんか止めた」と、友人に話した。「あんたが仏なら、京都の三十三間堂、世の中仏だらけだ。悪いヤツなど、いるはずがない」。ゆとりのない年金暮らし。余分な金が手に入れば、その分ぜいたくができる。やはり、欲深い思いが、見透かされていたようだ。

岐阜県北方町 大野博司さん 78歳 会社・仕事悲しみ怒り

  • facebook
  • twitter
  • line

平成19年の国内・海外の主要ニュースを見る