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平成作文~未来へ

作文応募期間:平成31年2月15日~平成31年3月31日

忘れることはないでしょう

平成25年3月、息子は特別支援学校を卒業し、地元のスーパーマーケットに就職した。知的障がいがあることが分かったのは3歳の時。FMラジオからaikoの「カブトムシ」が毎日のように流れ、「生涯忘れることはないでしょう」の歌詞で何度も泣いた。本当に忘れることのない年と歌である。それからいろいろなことで泣いて笑って15年が過ぎ、息子は今までの人生で最も高い山、「就職」を迎える。苦戦必至のはずだった。親は気合を入れまくり、子どもには「覚悟」という言葉を毎日のように擦り込んだ。しかしである。意外とすんなり決まってしまったのだ。息子本人もケロッとした表情のまま、親の私は安堵したものの、「もう少し頑張れたわねぇ」と拍子抜けの感が否めなかった。テレビの歌番組ではAKBの歌が季節を問わず流れ続け、ダンスの振りやフォーメーションをぼんやり追うだけで1曲もまともに覚えられない。“アニソンオタク”の息子に好きな曲を聞いても名前すら耳にも残らない。中日ドラゴンズは悲しみのBクラス。常勝球団だった頃は野球が嫌いだった息子に1試合も見せてはもらえず、見るようになってからはじりじり負け試合を増やし続けている。年を重ねるごとに感覚が鈍くなってしまったのか。平成25年、思い出せるニュースが出てこない。でも、ま、いいか。わが息子は無事就職できた。自分一人で勝ち取った。これこそがピカピカ光り輝く一番のニュース。だから母親の私、平成25年も「生涯忘れることはないでしょう」。

三重県桑名市 大場直子さん 56歳 家族・親族就職・転職

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