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平成作文~未来へ

作文応募期間:平成31年3月15日~平成31年4月30日

男の値打ち

水道料金の請求額に驚いて、いつも修理をお願いする同じ町内の水道屋さんに来てもらった。地下に埋まった水道管の漏水箇所を見つけて、すぐに修理は終わった。さすがに50年も続けてきた水道屋さんだ。この間には、多くの会社が廃業したり、所有者が替ったりした。「よく同じ仕事を続けることができたね」と、家内が急須に湯を注ぎながら言った。「いろいろとあったが、女房のお陰で今日まで続けることができた。本当に感謝している」。余計なこと言ったと思ったのか、少し顔を赤らめたように見えた。「旦那さんが感謝していたと、奥さんに伝えるね」。お茶を勧め、微笑みながら水道屋さんの顔を覗き込んだ。「それを言っては、男の値打ちがさがる」。人差し指を口に当て、内緒のサインをした。夫婦で歳を重ねた大抵の男性は、妻がいて今があるという。特別な言い様ではない。この年、ノーベル賞を受賞された、大隅良典先生も妻に感謝し、内助の功を言われていた。日本の男性は、誰もが奥さんに優しい。「パートナーを一度選ぶと、一生離れようとしないのは人だけではない、知っているか」と、今度は、私に聞いてきた。「フクロウやツル、ハトなど鳥だろう」と応えると、「渓流魚のイワナだ。メスを釣り上げると、次には必ずオスが、どうなるのか分かっていて釣られてくる。ただ、オスの場合は、10匹を釣り上げてもメスは、7匹しか釣れない」。ニヤリとしながら家内の方を見た。この秋、私たちも結婚以来、50年もの年月を、共に過した記念の日を迎える。新婚旅行の思い出がある指宿温泉に連れて行くと、水道屋さんの前で約束した。ホテルでは、連れ添った長い年月に乾杯しよう。この時、男の値打ちがさがることは言わないからな。私は、胸の中で呟いていた。

岐阜県北方町 大野博司さん 78歳 家族・親族趣味・レジャー

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